桐生新町重要伝統的建造物群保存地区にあって、惜しまれながらも約4年前に廃業した銭湯「一の湯」。この一の湯を復活させようと、埼玉県から移住した山本真央さんが奮闘している。桐生市本町にオフィスを置くIT企業「株式会社CICAC(シカク)」(本社・東京都渋谷区)の協力を得て、年内の再開を目指す。
一の湯は織物工場の女性工員の浴場として始まり、その後、銭湯になったという。建物は1912年の建築だ。世代を超えて地域の人に親しまれてきたが、2018年に経営者が亡くなり廃業した。
山本さんと一の湯の出会いは昨春に遡る。埼玉県のバイク店に勤務していた山本さんは、桐生市のライダー向け衣料品店オーナーから一の湯を紹介された。実際に見に行ったところ、歴史をまとうそのたたずまいに魅了されたという。「このまま朽ちさせてはならない」と一大決心し、1年間の準備を経て今春、桐生市に移住した。
パートで働きながら地域活動に参加する中で、CICACの代表取締役・今氏一路さんと知り合い、同社も協力を申し出た。
高い位置にある窓から光が入り、明るい浴場。壁のタイルにはコイや山並みが描かれている。湯はボイラーでまきを燃やして沸かすが、営業を停止していた約4年の間に機器の劣化が進んでしまった。
山本さんは10月、一の湯の所有者と賃貸借契約を結び、専門業者と共に本格的に整備を始めた。公衆衛生の基準をクリアするなど課題は多岐にわたる。そこで動画やSNSを使って活動の趣旨を伝え、修繕費として300万円を目標にクラウドファンディングに挑戦中だ。
最近は活動を知った人から、応援の手紙が届くようになった。今氏さんは「これまでも一の湯を復活させたいという声があったそうです。私たちが代表になり、再開を望む人々をつないで一緒に取り組んでいきたい」と話す。桐生のシンボル・重伝建の銭湯に湯気を上らせるため、山本さんとCICACの邁進(まいしん)は続く。
住所
桐生市本町1-4-35
問い合わせ
一の湯 mao@1noyu.jp
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