群馬県で活躍するさまざまな“輝く人”を紹介するコーナー。今回は榛東村の寺院「大福院」の次期住職で、山伏の小野関隆香さんを紹介。山伏は、山中での修行により悟りを得る「修験道」の行者。彼女が山伏になったきっかけや、京都・聖護院での修行、今後の展望などを取材した。大福院や修験道、山伏を多くの人に知ってもらうべく奔走する彼女の素顔に迫る。

「大福院」次期住職・山伏　小野関 隆香さん（21）

PROFILE

　1998年9月13日生。吉岡町出身、榛東村在住。高校1年生の時に参列した親戚の葬儀で目にした山伏の神々しい姿に魅了され、山伏になることを決意。高校卒業後の2017年に修験道の本山派総本山・聖護院（京都）に学寮生として入寮。2年間の修行を経て「柱源（はしらもと）護摩」「採燈（さい とう）護摩」「地鎮作法」など15の法の免許を取得。2019年に帰郷後、大福院住職の養子となり、県内各地で法話会や講演会を開いている。大福院次期住職。

　小野関さんが山伏を志したきっかけは、高校1年生の時に大福院が執り行った親戚の葬儀だった。そこで目にしたのは、黒い衣ではなく鮮やかな黄色の「鈴懸（すずかけ）」を着た山伏姿の住職。小野関さんは驚きながらも、住職の神々しい雰囲気や力強さに魅了された。

　家族ぐるみで大福院と交流があった小野関さんは、山伏になりたい旨を住職に相談。地方より本山での修行を勧められ、修験道の本山派総本山である京都・聖護院での修行を決めた。

　高校を卒業した2017年4月、聖護院の修験学寮に入寮。学僧として「柱源護摩」「採燈護摩」といった法を学びながら、「下座行（げざぎょう）」や、山修行などに2年間励んだ。中でも過酷な修行の1つが「大峰奥駈（おおみねおくがけ）修行」で、奈良県・吉野～和歌山県・熊野の山道を5泊6日で踏破する。小野関さんは「つらさよりも『山伏になりたい』という思いの方が勝ったので、『やめたい』とは思わなかった。住職や母から『ダメだったら帰って来ればいい』と言われていたことも心の支えになった」と当時を振り返る。

　学僧期間を満了した小野関さんは2019年に帰郷。後継者のいなかった大福院住職の養子に入ると、薄れていた他の寺院や地域との結び付きを取り戻そうと模索した。まずは大福院や山伏を知ってもらおうと、SNSで情報発信を開始。すると、投稿を見た人から法話会の依頼が入り、徐々に法話会や講演会に呼ばれるようになっていった。

　小野関さんは、「山という不自由な環境に身を置くことで、普段の生活で自分がどれほど周りに生かされているかを実感できる。そうした山伏の素晴らしさを、さまざまな世代の人に伝えていきたい」と話す。「最終的には大福院で、法話会やかつて行われていたお祭りを開き、以前のようなにぎわいを取り戻したい」と笑顔を見せる。これからも若い彼女ならではの方法で、大福院や修験道を盛り上げていく。

■ 休日の過ごし方は
ファッションやカラフルなものが好きなので、コロナウイルス流行前はよく原宿にショッピングに行っていました。「群馬県史」や地域の歴史の本を読むことも好きです。

■ 好きな食べ物は
お菓子です。京都のおいしいお菓子も地元群馬の銘菓も大好きです。

■ お気に入りのスポットは
早朝の京都です。聖護院での修行中、年に2回ある休日の早朝に出かけていました。日中は観光客でにぎわう観光名所を独り占めできます。中でも特に好きな場所は、送り火で有名な如意ヶ嶽（大文字山）と八坂の塔です。

■ モットーは
色々なことに挑戦することです。聖護院や大福院の住職のように、型にとらわれず「何でもやってみよう」という精神の人が周りにいたので、影響を受けました。

■ 最近始めたことは
お寺の古文書を整理しながら、当時の群馬の山伏を想像して思いをはせることです。古文書はまだ読めないので、読めるように精進していきたいです。

■ 尊敬する人物は
大福院の先々代、隆円住職です。お会いしたことはありませんが、お寺にある写真や文書を整理していく中で、隆円住職がさまざまな人から信頼されていたことを実感しました。

Twitter【アカウント】小野関隆香
Facebook【アカウント】小野関隆香
Instagram【アカウント】daifukuinryuuka

小野関さんの法話会や講演会情報のほか、大福院ゆかりの品や境内のようすなどを発信している。
※現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、法話会や講演会は休止中。