群馬よみうり
群馬を楽しむ情報マガジン「タウンぐんま」


ピックアップ-G
【HUMAN】
インタビュー特集 群馬の“輝く人”
vol.29
2021.09.30
ピックアップ-G  富岡市

 群馬県で活躍するさまざまな“輝く人”を紹介するコーナー。今回は日本絹の里で企画展「大竹夏紀展」を開催中の染色アーティスト・大竹夏紀さんを紹介する。絹布に描かれた花や光をまとった女性たちは見た人に鮮烈な印象を残す。伝統技法のろうけつ染めを使ってポップで鮮やかな作品を生み出し、「ろうけつ染めの革新者」と呼ばれる芸術家に、作品制作への思いを聞いた。

ろうけつ染めで描く“キラキラした女性”
理想の世界を色鮮やかに表現するアーティスト

染色アーティスト 大竹 夏紀さん(39)

PROFILE

 1982年8月7日生。富岡市出身。多摩美術大学生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻卒業。同大学院美術研究科デザイン専攻修了。大学、大学院でテキスタイルを学び、ろうけつ染めに出会う。修了制作展で、ろうけつ染めを使った作品を発表。卒業後、国内やドイツで個展を開催。2010年には、その作品が東京モード学園のテレビCMで採用されるなど注目を集めてきた。2011年から美大の非常勤講師を勤める。

理想のアイドルを描きたい
ろうけつ染めとの出会い

 小さい頃から絵を描くのも見るのも好きだった大竹さん。少女漫画を愛読し、特に魔法少女の作品がお気に入り。キラキラと活躍する女の子に強く憧れた。明るく希望に満ちた「理想のアイドル像」を描くために、芸術の道に進むことを決め美術大学を受験。しかし、第1志望のグラフィックデザイン学科は不合格に。テキスタイルデザイン専攻で入学したが、今はこの専攻が大きな転機だったと考えている。「CGで同じような絵を描いても埋もれてしまったと思う。ろうけつ染めに出会えたことで差別化され、注目してもらえるようになった」と振り返る。

 大学で学んだ多くの染色技法の中で、理想のアイドル像を表現するのに最も適していたのがろうけつ染めだった。薄い絹布にろうで防染し、筆で染料を付けていく。グラデーションの美しさやエッジの効き具合、絹の上品な光沢感が、大竹さんのイメージと一致した。

テーマは現世から天上へ
普遍的な美を求めて

 大学院の修了制作ではろうけつ染めの技法で作品を発表。卒業した年に早くも初個展を開くなど精力的に活動した。2010年には作品が東京モード学園のテレビCMに採用され、2011年にはドイツでの個展を実現。現在まで情熱的に創作活動を続けている。

 大竹さんにとって創作活動は理想の美の表現手段。「もし絵の資質がなくても、音楽や文章、ファッションなど他に得意な分野で理想の美を追求し、表現していたと思う」と話す。

 ここ数年で描くテーマがアイドルや少女から、神秘的な部分を強めた「女神」や「天女」に変化した。若い世代特有のエネルギーよりも、普遍的な美しさを追求するようになり、女神や天女の文献や資料に当たる時間も増えた。テーマは変化したが、根底にある「自分の理想の世界を描く」という部分は一貫している。

服のデザインにも意欲
広い視野で追及する理想郷

 今後は洋服や浴衣のデザインを手掛けるなど、別の表現との組み合わせにも挑戦したいという。また、専門分野がアート以外の人と語らう機会も楽しみにしている。「例えば心理学を研究している人に、理想の世界について聞いてみたい」。内面に広がる理想の世界を探究して表現した絵は、これからも多くの人を魅了していくだろう。

もっと知りたい! 大竹夏紀さんの深掘り情報

休日の過ごし方は
自分で描くだけでなく、他の人の絵を見るのも大好きなので、美術館によく行きます。着物の柄を見ることも好きなので、着物関連の展覧会にも行きます。

 

自身の性格を表現すると
同じことをずっとできるタイプです。ろうけつ染めでは同じ作業を延々とすることが多く、大きい作品ではアイロンを6時間かけ続けたり、4日にわたり作品を切り取ったりします。こうした作業が苦ではなく、テキスタイル向けの性格だと思います。

 

必ずないとだめなものは
絵です。見ることも描くこともできなくなると、心に潤いがなくなります。

 

作品を見た人にどんなことを感じてほしいですか
私が描いているのは「理想の世界」なので、私にとっての理想の世界を感じてもらえるとうれしいです。理想は人によってまったく違うと思うので、見た人がそれぞれ自分の理想の世界について思いをはせてほしいです。

 

最近、うれしかったことはありますか
作品を見た人がSNSで感想を発信してくれることです。現在の日本絹の里の展示は写真撮影もOKなので、「ここが気に入っている」といった感想を知ることができ、楽しいですね。自分の考えと異なる意見もあって、参考にすることもあります。

INFORMATION
大竹夏紀展 Mount Penglai

【日時】10月18日まで 9:30~17:00
【会場】群馬県立日本絹の里
【料金】一般200円、高校・大学生100円、中学生以下無料
【休み】火曜
【問い合わせ】群馬県立日本絹の里 027-360-6300

 

 大竹さんの大規模個展。古代中国における仙人が住むとされる霊山「蓬莱山(ほうらいさん)」がテーマ。現実に存在しない理想郷をモチーフに描いた作品が並ぶ。大型新作の展示を中心に、メイキング映像やアトリエの再現なども。ゲストトークほか関連イベントも予定。

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