群馬県から全国にはばたくアスリートを紹介するコーナー。さまざまな競技を対象にトップアスリートやその卵たちを取材し、競技に注ぎ込む情熱からオフの飾らない姿までをお伝えする。彼らがひたむきに練習に取り組む姿勢や試合での集中力、そして結果を受け止める表情は、どんな時でも私たちの心に元気や勇気を届けてくれる。群馬で育ったスポーツ界の若きエースを一緒に応援しよう。

櫻井 つぐみさん（育英大学2年：高知県出身、前橋市在住）

　今回は、2018年に開学した育英大学（高崎市）のレスリング部に所属する櫻井つぐみさんを紹介する。櫻井さんは昨年12月に行われた全日本選手権、今年5月に行われた全日本選抜選手権の国内2大大会で優勝。10月にノルウェーで開催される世界選手権の代表の座も勝ち取った。数々の大会で優勝を重ね波に乗る彼女の、強さの秘訣（ひけつ）や素顔に迫る。

CAREER

競技歴：16年

　【2019年】天皇杯全日本選手権 女子55㎏級 準優勝【2020年】クリッパン女子国際大会 シニア・ジュニアの部 55㎏級 優勝、天皇杯全日本選手権 女子55㎏級 優勝【2021年】ジュニアクイーンズカップ ジュニアの部 55㎏級 優勝、明治杯全日本選抜選手権 女子55㎏級 優勝、東日本学生選手権 女子57㎏級 優勝

　レスリング選手だった父の影響で3歳から始め、父が立ち上げたクラブに所属していました。中学時代は相撲部に入部してレスリングと両立し、足腰を鍛えて前に出る力を養いました。高校時代は、父が顧問を務める高知南高校のレスリング部に入部し、3年生の時には国際大会で優勝することができました。

　レスリングで自分が一番強くなれる場所だと感じたからです。育英大学女子レスリング部の柳川美麿（よしまろ）監督と私の父が知り合いだったこともあり、高校時代から週末に夜行バスで群馬に通い、育英大の練習に参加していました。練習環境が整っていて、経験豊かなコーチの方々がいることが決め手になりました。

　相手の腕をつかんで相手をコントロールする「腕取り」が得意なところです。私はタックルにあまりスピードがないので、タックルで仕掛けるよりも相手に接近した時に攻めるスタイルを得意としています。また、たくさん練習できるスタミナも強みです。

　昨年12月の全日本選手権では、大会前にけがをして不安もありましたが、高校3年生の時に出場した際は準優勝で悔しい思いをしたので、「今回こそは」と強い気持ちで臨みました。結果、その時にできる精一杯のレスリングをして優勝することができました。今年5月の全日本選抜選手権では、試合の内容はあまり良くありませんでしたが、優勝して世界選手権という大きな舞台への切符をつかめたことは良かったと思います。

天皇杯全日本選手権で柳川監督と（昨年12月）

　まずは10月の世界選手権で優勝することです。また、一番の目標は五輪での優勝です。2024年のパリ五輪では、私が取り組んでいる55kgの階級がないので、57㎏級に合わせて体をつくっていき、出場枠を勝ち取れるように頑張りたいです。

　櫻井選手の強みは組み手争いのうまさと、多彩な攻めができる技の多さです。また、強い向上心と豊富なスタミナを備えているので、居残りやオフの日の練習も多く、男子も含めた部員の中で最も練習を積んでいると思います。まずは10月の世界選手権、その後はパリ五輪に向けてしっかりと調整していってほしいです。

■ 普段の練習時間は
練習日は週6日で、朝はランニングを始めとしたフィジカルトレーニングを1時間半ほど行い、午後はスパーリングや技術練習を2～3時間行っています。技術練習では、五輪メダリストで男子監督の松本隆太郎さんに教えてもらうこともあります。

■ 転機となった大会は
高校2年生のインターハイ（全国高校総体）です。優勝を目標に挑みましたが2回戦で負けてしまい、表彰台にすら立てずとても悔しい思いをしました。それを機に「負けたくない」という気持ちがより一層強くなり、今まで以上に練習に力を入れるようになりました。

■ 座右の銘は
「継続は力なり」です。今まで積み重ねてきたことが結果に表れた時のうれしさはひとしおです。

■ 休日の過ごし方は
食べることが好きなので、おいしそうな料理を提供しているお店を調べてご飯を食べに出かけます。ずっと家にいることは少ないですが、最近はドラマや映画、アニメを見ることもあります。

■ 大学では何を学んでいますか
中学・高校の教員免許を取るための勉強をしています。レスリングが一区切りついた後は、地元の高知に戻って教員になりたいと思っています。