群馬県で活躍するさまざまな“輝く人”を紹介するコーナー。今回は昆虫食を販売・開発する「FUTURENAUT（フューチャーノート）合同会社」でCEOを務める高崎経済大学院生の櫻井蓮さんを紹介。櫻井さんが昆虫食に興味を持ったきっかけや、会社設立の経緯、商品開発へのこだわり、今後の展望などを取材した。“未来の食料”として期待されている昆虫食。そんな昆虫食の普及に努めている櫻井さんの素顔に迫る。

FUTURENAUT合同会社 CEO・高崎経済大学院生
櫻井 蓮さん（23）

PROFILE

　1997年9月7日生。新潟県出身。高崎経済大学院生。大学2年時に放置された竹林の有効利用を考える学生団体「KAGUYAの灯り」を結成。その後、卒業研究のテーマとして「昆虫食」を調査するためにタイでコオロギ養殖の現場を視察。2019年に「FUTURENAUT合同会社」を設立。現在はコオロギパウダーを使った商品開発のほか、昆虫食のセミナーやレシピコンテストを開催するなど、精力的に活動している。

　櫻井さんは大学入学時から、常に「何かしたい」という思いからさまざまな活動に参加するも、その「何か」を見つけることはできなかった。そこで「自分で行動するしかない」と決意し、2年生の時に放置された竹林の有効利用を考える学生団体「KAGUYAの灯り」を設立。ビジネスや起業の意識が高まっていった。

　そんな中、所属する環境系のゼミで水生生物の調査中、日本には古くから「ざざ虫」などの水生生物を食べる文化があることを知る。さらに調査を進めると、欧米諸国では昆虫を原料にした食品を、当たり前のように販売している事実に衝撃を受けた。この時、「なぜ日本ではこんなに昆虫食に対し嫌悪感があるのか」疑問を抱いたという。その後、卒業研究のテーマで迷っていた櫻井さんは、以前の経験から「昆虫食に対する心理」について研究することを決定。これを機に、櫻井さんは昆虫食に対してさらに興味を持つようになっていった。

　昆虫食について調査を進める中で、櫻井さんがタイを訪れた際、地元の農家が副業としてコオロギを養殖し、それを欧米の会社が買い付けていることに着目。当時のことを「生産コストが低く環境に優しい昆虫食は、未来の食料不足を解決する食材として需要が高まると感じ、ビジネスとして成り立つと思いました」と語る。そこで所属ゼミの飯島明宏教授、タイで会社を経営する伊禮喬太さんと昨年7月に「FUTURENAUT合同会社」を設立。日本人でも食べやすいように粉末状のコオロギを使った菓子を開発し、販売を開始した。今年8月には「コオロギレシピグランプリ」を開催するなど、昆虫食の普及に努めている。

　櫻井さんの夢は昆虫食を一般的な食材として定着させること。「昆虫食は一般的に抵抗感があるのが現状です。それを払拭するのが僕の役目だと思っています。将来的には肉や魚のように、食材として受け入れられるようになればいいですね」と語る。今後は菓子だけでなくパスタなどの開発も進めるほか、販路を拡大することでおいしくて安心・安全な昆虫食をPRしていくという。昆虫食で新たな食の未来を切り開く、学生CEOの挑戦は続く。

コオロギレシピグランプリで講演中の櫻井さん

■ 昆虫食の魅力は
たんぱく質やビタミン、ミネラルといった栄養素が豊富な点です。しかも、生産によって排出される温室効果ガスは牛の100分の1程度で、飼料や水の消費を抑えることもできます。

■ 仕事でこだわっていることは
おいしくて安全な商品を開発することです。あとは社会人でもあり学生でもあるので、仕事と学業どちらも中途半端にならないようにバランスを取ることを意識しています。

■ 自分にとっての必需品は
PCやスマホです。調べ物をしたりスケジュール管理をしたりするのに欠かせないツールです。

■ 最近熱中していることは
ジムに通って体を鍛えています。運動後はプロテインの代わりにコオロギパウダーを溶かしたドリンクを飲んで、どの程度効果があるのかも実験中です。

■ 好きな言葉は
漫画「暗殺教室」の「どの川に棲んだかじゃなくて棲んだ川でどう泳いだか」です。この言葉のおかげで自分がどういった環境にいるかよりも、その環境でどう行動するかの重要さに気付かされました。

■ 群馬のおすすめスポットは
前橋市富士見町にある「赤城山古民家IRORI場」によく行きます。何か考え事をしたり仕事をしたりと、集中したい時に利用しています。

　クリケット（食用コオロギ）パウダーを生地に練り込んで薄く焼き上げたゴーフレット（602円から）や、クリケットパウダーを販売する同社のネット通販サイト。商品はネット通販以外に、高崎駅内の「群馬いろは」のほか「ぐんま昆虫の森」でも購入できる。
※価格は税別。

【URL】https://shop.futurenaut.co.jp/