人口減少や高齢化に悩む地方に都市部から人を呼び込み、1年～3年の任期で地域活動に協力しながら定着・定住につなげることを目的とする「地域おこし協力隊」。2009年より総務省が始めた制度で、群馬県内でもさまざまな年代の隊員が活動している。このコーナーでは、まちの未来を盛り上げるべく日々奮闘する隊員たちにスポットを当て、地域ごとに紹介していきたい。

桐生市黒保根地区・地域おこし協力隊　大畠 英人さん（43）

　豊かな自然環境の下、年間を通してさまざまな農作物が収穫できる桐生市黒保根地区。そんな同地区の農産物を使い、加工品の開発や販路拡大に挑戦しているのが大畠英人さんだ。生まれも育ちも東京で、長年ミュージカル俳優として活動してきたという大畠さんに、桐生市の協力隊員を目指した理由などを聞いた。

PROFILE

　今年5月に妻と4歳・1歳の娘と共に桐生市へ移住。小学1年から始めたアイスホッケーでは国体出場経験を持つほか、ミュージカル歴20年。数年前に体調を崩した経験から腸活関連のセミナーや、ミュージカルの主宰にも力を入れる。

【Instagram】https://www.instagram.com/hideto.yuruttominorishiki/

　文系の大学に通っていた2年生の頃、ミュージカルに出演したのがきっかけで音大に入り直しました。大学院まで進み声楽やクラシックについて学んだ後、ミュージカル俳優として活動しながら歌唱指導も行い、その傍らで「東京オペラシティ」内にあるコンサートホールを管理する会社で働きました。プライベートでは、ミュージカルを通じて知り合った妻と37歳の時に結婚。妻が桐生市出身ということもあり、家族でよく群馬を訪れていたんです。帰省する度、自然の中で伸び伸びと過ごす子供たちを見て桐生市への移住を考えるようになりました。そんな時、地域おこし協力隊について知り、調べると黒保根支所で2週間の協力隊インターンの募集を行っていた。参加してみると地元の人が喜んで歓迎してくれて。そのまま応募を決めました。

　地元産の農産物を使った加工品の開発や、販路拡大が主な仕事です。5月に着任し、まずは人脈作りから始めました。野菜や加工品を作ったことがない自分にとって、それが一番の近道と考えたのです。その際も正式に隊員となった私を皆さんが「お帰り」と言って迎えてくれたのがうれしかったですね。地域を回る中で梅林や畑、田んぼを借りることができ、勉強のため野菜や米作りに取り組んでいます。加工品作りの名人にも出会い、一緒に300kgの梅を使って無添加の梅干しや梅シロップ作りに挑戦。7月には市内のチャレンジショップで梅ジュースを販売しました。また今までの経歴を買われ、地区で行われる歌の催しに妻と一緒に講師として参加しています。

　秋冬に向け、柿やユズ、大根を使った加工品を作り、インターネットを中心に販売していきたいです。活動を行う中で、肥料が高騰しているにも関わらず市場での価格が上がらないことや、新鮮で味もいいのに色や形で廃棄処分になってしまう野菜が多いといった現状が見えてきました。農家が抱える問題を、ミュージカルに携わってきた自分なりの方法で発信できたらと思い、食とアートを絡めたイベントも計画中です。私は思い立ったらすぐ行動してしまうので、物事の順序を大切にする行政と行き違ってしまうこともありますが、そんな自分を黒保根支所の皆さんは親身になって応援してくれるのでありがたいです。加工品作りや販路拡大はもちろん、その根本にある食の大切さや価値も伝えていくことで、黒保根の野菜のおいしさや魅力をより多くの人に知ってもらえるよう頑張ります。

　県東部、赤城山東麓の山間傾斜地に広がる風光明媚（めいび）なエリア。2005年に桐生市に編入合併する前は、勢多郡黒保根村でした。南部には渡良瀬川が流れ、わたらせ渓谷鐵道からは渓谷美を見渡すことも。冬季の寒気はそれほど厳しくなく、夏季の暑さも比較的しのぎやすく生活しやすいのが特徴です。

　緑あふれる景観に爽やかな植物の香りや澄んだ空気、川や虫の音など五感を通じて感じられる豊かな自然が魅力です。ここでの暮らしは精神的に落ち着きますし、娘たちも今まで見たことないくらい毎日を楽しんでいます。野菜や米もおいしく、地域の皆さんは驚くほど温かな人が多いです。

　国道122号沿いにある食事どころ。手打ちうどんやそばを始め、自家米「キヌヒカリ」を使った丼ものがリーズナブルに味わえる。人気はきのこうどん（790円）や豚天丼（680円）。大畠さん行きつけの店であり、店主夫妻の温かな人柄も魅力という。現在は店主の腕の治療により臨時メニューで営業中。

【住所】桐生市黒保根町水沼180
【営業時間】11：00～20：00 ※夜に宴会がある場合は14:00頃まで。
【休み】火曜
【問い合わせ】0277-96-3469

　4年ぶりの開催となる夏の風物詩的イベント。八木節大会のほか、2日目にはミニトレインの運行やマスのつかみどりなどが行われる。祭りのフィナーレには、夜空を華麗に彩る約1,500発の花火の打ち上げも。花火の終了に合わせ、わたらせ渓谷鐵道の桐生行き無料臨時列車が運行される。

【日時】8月15日（火曜）18：00～22：00、16日（水曜）12：00～21：50 ※マスのつかみどりは小学生以下対象。
【会場】黒保根運動公園（水沼駅より徒歩1分）
【問い合わせ】黒保根支所 地域振興整備課  0277-96-2113