群馬で生まれ、育った地元企業の歴史やこだわりを紹介するコーナー。今回は、そばやうどん、パスタなど、さまざまな麺を手軽に素早く作ることができる小型製麺機を製造･販売する「株式会社ポップ」を紹介。オリジナル製麺機の誕生秘話や、こだわりを取材した。今や国内だけでなく海外にもシェアを広げ、食品製造機器業界では「製麺機といえばポップ」と言われるほど成長を遂げた同社の秘密に迫る。

　「株式会社ポップ」は藤岡市に本社を置く製麺機の製造販売会社。もともと都内の百貨店で料理人をしていた現社長の立石眞一さんが、独立後に群馬県内のホームセンター内で飲食店を開くことになり1994年に会社を設立。そんな中、業務用の製麺機を目にした立石さんは、「店舗用の小型製麺機を作って、全ての業務をパッケージ化したビジネスを始められないだろうか」と考え、機械製造をしていた知人と協力して1995年から製麺機の開発に着手した。試行錯誤の末、2002年に誰でも簡単に十割そばが作れる小型製麺機を完成させると、同年に研修施設も兼ねた直営店「清水十割そばいち高崎総本店」をオープン。翌年から製麺機の販売と同時に、店舗の立ち上げからメニュー開発、そば粉やだしといった食材の提供までを一貫して行えるシステムを構築した。

　次第に同社の製麺機を導入する店舗も増え、順調に売り上げを伸ばしていくと、2007年に事業を製麺機関連に集約。販路拡大のために食品業界の見本市である「国際ホテルレストランショー」への出展も開始した。当初は全く注目されなかったが、毎年出展しているうちに「本格的なそばを短時間で手軽に作れる」と評価され始め、企業や個人オーナーからの注文が増えていった。2009年には製麺機の押し出し技術にまつわる特許を取得。近年では国内だけでなくアメリカやイギリス、ドバイといった海外との取引も増加している。

　今後は製麺機の改良に加え、導入した店舗がある各地域の特色を生かしたメニュー開発などにも力を入れていくという同社。これからも独自の技術と開発力で、誰でも気軽においしい麺が作れる製麺機を生み出してくれそうだ。

専門メーカーも驚きの豊富な知識

　製麺機の製造以外にも、そば粉の産地選定や配合のほか、だしなども自社で開発している。自社の製麺機で作るそばに合う味を常に追い求めて社内で独自の研究を重ねており、専門メーカーにも負けない豊富な知識を有している。

自社製品が群馬県の「1社1技術」に認定

　2008年、群馬県内製造業の優れた独自技術を選定する「1社1技術」に、定量のそば粉と水を入れるだけで“水回し”ができる「ハイパーミキサー」と、短時間で製麺できる油圧製麺機が認定された。

さまざまな種類の麺を生み出す特製ノズル

　製麺機のノズルを交換することで、そば以外にもうどんやパスタ、ラーメンなどのさまざまな麺を作ることができる。また、ノズルには緻密な計算から導き出された大きさと形状の穴が開けられており、この穴によって喉ごしなめらかな麺が生み出されている。

■展示会に出展する際、来場者に親しみを持ってもらおうと「ポップの歌」を作成。同社のHPでも公開している。

■飲食店以外にも、社員食堂や給食施設、障害者支援施設でも同社の製品が使われている。

簡単な研修を受ければ、誰でもさまざまな麺を作れるという同社の製麺機。手打ち麺とはどのように違うのだろうか。その工程を「清水十割そばいち高崎総本店」で取材した。

❶昼時には多くの客でにぎわう同店。一見するとごく普通のそば屋だが、製麺機の導入を検討している人へのデモンストレーションを始め、導入店の開店前研修も同店で行っている。先日はニューヨークから導入店の社員が研修に訪れた。

❷そば粉と水を計量後、ハイパーミキサーに投入。3分ほどで水回しが完了する。その後生地をミキサーからバットに取り出し小分けに丸める。人の手で粉からそばを製麺する場合、この工程は約40分かかる。

❸丸めたそば生地を製麺機に入れて麺を作る。油圧で生地を押し出し圧着させることで麺にコシやつるっとした食感が生み出される。麺が出来上がったら、沸騰した湯の入った釜に入れて45秒間ゆでた後、冷水にさらして盛りつける。

❹ここまでの所要時間は5分ほど。混雑時でも効率よく作りたてのそばを提供できるほか、「さくらそば」や「ゆずそば」「抹茶そば」といった多種多様な変わり麺を小分けに作ることができるのも、同社の製品ならでは。

【取材協力】株式会社ポップ　本社／藤岡市上大塚860清水十割そばいち高崎総本店／高崎市島野町1036-1　問い合わせ／027-360-5833