群馬県民なら誰もが知っているあんなものやこんなもの……。それらを製造する地元企業の歴史やこだわりを紹介するコーナー。今回は、多くの群馬県民から支持されている和菓子「本宿どうなつ」を製造･販売する「株式会社古月堂」をご紹介。本宿どうなつの誕生秘話や、同社のこだわりを取材した。今や群馬県を代表する銘菓になっている「本宿どうなつ」。そんな人気商品を生み出した同社の秘密に迫る。

　「株式会社古月堂」は下仁田町本宿に本店を置く和菓子製造販売会社で、1891年に和菓子店として創業。本宿は、江戸時代に砥石（といし）と信州米の輸送に使われていた下仁田街道の宿場町として栄え、同店は地元住民や街道を往来する人に当時から愛されていた。しかし平成に入ると、高速道路が開通したことにより本宿を訪れる人も減少。厳しい経営状況の中、下火になった本宿に名物を作りたいという思いで、創業当時から作り続けているあんドーナツの甘さと材料を変えて改良し「本宿どうなつ」と名付けて2002年から販売を開始した。本宿の名を冠したこの商品は町内を中心に人気となっていった。

　そんな中、評判を聞きつけた県内の百貨店から声がかかり、物産展に出店することになった。作りたてを味わってもらうために実演販売の形態で出店したが、当時はまだ知名度が低く、有名店の並ぶ会場ではなかなか売れなかったという。その後も地道に県内各地の物産展に出店していくと、そのおいしさが徐々に口コミで広がり売り上げも増えていった。人気が高まる中、「本店や物産展以外でも買いたい」という要望も受けるようになり、これをきっかけに2014年に2号店となる「前橋みなみ店」をオープン。2017年に行われた「ぐんまのおみやげ総選挙」では本宿どうなつが3位を獲得し、群馬県を代表する銘菓として多くの人に知られるようになった。

　現在は世界遺産に登録されている荒船風穴の石垣をモチーフにした「荒船風穴最中」や、前橋駅前の並木通りをイメージしたバウムクーヘンの「欅（けやき）の木」といった商品も販売している。今後もさまざまな試みや商品開発を続けていくという同社。和菓子の老舗が生み出す新たな銘菓の誕生に期待したい。

こだわりの餡作り

　本宿どうなつの餡（あん）は、原料の白いんげん豆やあずきの仕入れから餡の練り上げまでを自社で一貫して行っている。手間を惜しまないこだわりの餡作りで、創業から語り継がれている伝統の味を守り続けている。

横浜市の百貨店でも人気の「本宿どうなつ」

　県内百貨店での人気を受けて、横浜市にある系列店の全国の銘菓を日替わりで販売するコーナーで、毎週土曜日だけ「本宿どうなつ」を販売している。現在、群馬県からこのコーナーに出品しているのは同社のみで、販売開始から6年がたった今では、店頭に並ぶとすぐに売り切れてしまうほどの高い人気を誇っている。

■本宿どうなつが揚げ上がるタイミングで店を訪れると、砂糖をまぶす前の本宿どうなつを購入することができる。気になる人はスタッフに声を掛けてみて。

■予約制で販売している落雁（らくがん）は、創業当時から代々受け継がれてきた木製の型を使用して作られている。

■今年の9月まで同社が軽井沢で営業していた喫茶店「古月堂」は、漫画「軽井沢シンドローム」の主人公たちが通う喫茶店「ら・くか」として登場している。

❶餡を包む生地には群馬県産の小麦粉を使い、餡には北海道産の白いんげん豆とあずきを使用している。本宿どうなつ作りの全ての工程は、下仁田町の本店と前橋みなみ店の各店に併設されている自社工場で行っている。

❷炊き上げた豆をほかの原料と合わせて練り上げて餡を作っていく。本宿どうなつの餡のなめらかな口どけとほくほくとした食感は、熟練の職人の技によって生み出されている。その製法や配合は企業秘密とのこと。

❸餡が完成したら甘さを抑えた生地で1つひとつ丁寧に包み、上質な油で揚げていく。このとき油の温度と揚げ時間を細かく管理することで、外はサクッと中はふっくらとした絶妙な食感を生み出している。

❹揚げ上がったら砂糖をまぶして「本宿どうなつ」が完成する。完成した本宿どうなつは本店と前橋みなみ店のほか、不定期で百貨店やショッピングセンターなどでも販売。老若男女問わず好まれる味わいで、年間約60万個を売り上げる。

【取材協力】株式会社古月堂　本社／下仁田町本宿3760