群馬県民なら誰もが知っているあんなものやこんなもの……。それらを製造する地元企業の歴史やこだわりを紹介するコーナー。今回は、七福神のイラストでおなじみの「七福神あられ」を製造・販売する「株式会社幸煎餅（さいわいせんべい）」をご紹介。今や贈答品などで定番の「七福神あられ」の誕生秘話や、同社のこだわりを取材した。群馬県を代表する銘菓「七福神あられ」。その魅力に迫る。

　「株式会社幸煎餅」は前橋市に本社を置く製菓会社。1896年に東京都の日本橋で創業。その後、本社を前橋市に移して営業を開始した。長年、せんべいを作り続けていた同社だったが、ほかの店の商品との差別化が難しく「何か新しいものを作れないか」という考えで、1970年代半ばから新商品の開発に着手。試行錯誤の末に一口サイズのあられを考案し、50種類もの味の候補から厳選されたのが7つの味だった。商品名は、前橋市千代田町にある大蓮寺の弁財天からヒントを得た会長が「7つなら昔から七福神に決まっている」という一言で「七福神あられ」と命名。パッケージは、せんべいの見た目が地味になりがちなことから、当時は珍しかった中身の見えない華やかなデザインを採用し、1977年から発売を開始した。

 「七福神あられ」は一口サイズで食べやすく、いろいろな味が1度に楽しめると評判になり、その名は群馬県内を中心に徐々に拡大。1985年から新聞広告やラジオCMなどで県内外へ向けて広報活動を開始すると、売り上げも右肩上がりになり、人気商品へと成長していった。人気が高まる中、販路も拡大。群馬県内や、東京都の銀座、静岡県にある直営店のほか、百貨店やスーパーでも取り扱うようになり、現在ではインターネット通販で全国からの注文にも対応できるようになった。

 　昨年開催された「ぐんまのおみやげ総選挙」で総合第2位に選ばれ、「もらってうれしい部門」では第1位になるなど、今や群馬県を代表する銘菓となった「七福神あられ」。昨今では、ボンゴレ味やストロベリー味のハート形のせんべい「おいしいハート」を発売するなど、同社では時代とともに変遷するニーズに合わせ、新商品開発にも積極的に取り組んでいる。

9年連続でモンドセレクション最高金賞を受賞

　2009年に「七福神あられ」の化粧缶入りの商品が、さまざまな評価基準において優れている製品に贈られる「モンドセレクション」の最高金賞を、関東の米菓業界としては初めて受賞。その後は、9年連続で同賞を獲得している。

「七福神あられ」用の特注包装マシン

　あられの包装は専用の機械で行う。一列に並べられたあられは、ベルトコンベアーで運ばれセンサーを通過。ロール状にセットされたフィルムで、上下から挟むように1つひとつ包装していく。あられがない場所ではフィルムが止まる仕組みになっている。

■「七福神あられ」は7つの味以外に、焼きまんじゅう味やココア味が入っている商品も存在する。
■「七福神あられ」の発売当時、包装に描かれた七福神のイラストは、学生が描いたもので、日本画のようなデザインだった。その後、より親しみを持ってもらおうと、現在のアニメタッチのイラストに変更された。
■開発当時、オレンジ味やワイン味のあられも「七福神あられ」の候補として試作された。

❶玉村町の工場では、1日におよそ20万粒～25万粒のあられを製造・包装している。同工場では、徹底した衛生管理の下、さまざまな需要に応えられるように、多種多様なタイプの「七福神あられ」を生産している。

❷国産米で作った円形の生地を、鉄板で挟んで焼き上げることで、サクサクとした食感に仕上がる。焼き上がったあられに植物油を付けてコクを生み出し、温かいうちに独自に配合した味のパウダーを絡ませる。

❸味付けされた「七福神あられ」は、専用の機械で1つひとつ丁寧に包装される。1つのラインにつき1種類の味を包装しているので、週によっては需要に合わせ、5ライン全てが同じ味を包装していることも。ちなみに、1番人気は「しそ味」。

❹さまざまな工程を経て完成した「七福神あられ」。老舗の伝統技術と、こだわりを込めて作られたこの商品は、あと引くおいしさと七福神が持つ縁起物のイメージもあり、お祝いや土産物といったギフトとしても重宝されている。

【取材協力】株式会社幸煎餅　本社／前橋市千代田町4-19-3