群馬県で活躍するさまざまな“輝く人”を紹介するコーナー。今回は9月～10月に開催される「高崎音楽祭」で、最後を飾る「高崎こどもコンサート」（10月4日、5日）のプロデュースを務める作曲家の吉田ゐさおさんを紹介。「タンスにゴンゴン」「リボンブラ」ほか数々のCMやドラマの音楽を手掛ける作曲家に、音楽への思いを聞いた。

作曲家　吉田 ゐさおさん（48）

PROFILE

　1972年10月1日生。高崎市出身。高木郁乃さんとの音楽ユニット「ジャングルスマイル」での活動などを経て、現在はCMやテレビドラマ向けの楽曲を多数制作している。NHK Eテレのアニメ「オトッペ」の楽曲作曲や音楽監修、ラジオ高崎の番組「&RADIO」のパーソナリティなどマルチに活躍中。東京都目黒区にあるプライベートスタジオは「だるまスタヂオ」で故郷の物産を名前に冠した。

　少年時代はバンドブームの真っ最中。高崎市立片岡中学校、前橋育英高校では友人らとバンドを組んでいたが、音楽を仕事にしようとは考えていなかった。一度就職し、営業車の中で聞いたラジオCMのBGMやサウンドロゴにひかれ、「誰が作っているのか、自分の曲も使ってもらえないか」とラジオ局や広告代理店に直接問い合わせたことが、職業的作曲家としてのスタートになった。

　給料で機材を購入し、音作りを進めた。実際にCMで使われるようになって自信が付き、「活動の幅を広げたい」と広告代理店の担当者に相談すると「音楽の学校を出ておくことが、将来につながる」と勧められた。猛勉強して東京音楽大学に入学し、在学中に結成したユニット「ジャングルスマイル」で高い評価を獲得。活動休止後もシンガーへの楽曲提供やCM向け楽曲といった作曲を中心に、舞台俳優にも挑戦して活動の幅を広げた。

　CMやドラマの劇伴曲では、企業や制作会社の目指すイメージに添った音楽を作る。クライアントへのヒアリングで出た要素やアイデアから複数の曲を準備し、選ばれたものを磨く。その数は年300曲を超える。

　コミカルなメガネや帽子など奇抜なスタイルは、「吉田ゐさおという人間を記憶してほしい」という思いからだ。「『吉田ゐさお』というブランドは、演奏するメンバーやスタッフが支える。彼らが力を発揮するためにも、自分の存在を印象に残し、作品の信頼・信用に結び付けたい」と話す。

　最近は2児の父、そして夫として「子供も大人も楽しめる音楽」を考えるようになったという。今年初めて参加する高崎音楽祭では、「こどもコンサート」を提案し、自身のこれまでの活動の集大成になるものを、と意気込んでいる。「こどもコンサートと言っても、『お母さんたちも音楽で遊びましょう』を目指して構成中。音を楽しみに来てほしい」と話す。

　将来的には、音が人間に及ぼす効果を研究したいと考えている。例えば、赤ちゃんが泣き止むといわれる音や曲がある。「その理由を理論化できたら、親子の心の健康にも役に立つはず」。そんな音の未来を夢見ている。

■ 吉田さんにとって作曲とは
依頼者の伝えたい気持ちを代弁するためのものと考えています。自分が作りたい曲を作るのではなく、依頼者の「言葉にならない思い」を音楽にする行為です。その意味では「イタコ」的な立場かも。

■ 「会心の出来」と思えるCMは
金鳥「タンスにゴンゴン」のCMシリーズです。商品の箱を置く音や引きずる音を歌に合わせる作り方や、自分でアイデアを出した振り付けを本職の方にブラッシュアップしてもらうなど、時間をかけて作ったこともあり、強く印象に残っています。

■ 過去の作品は視聴できますか
一部を所属事務所のHP（www.andmo.jp/wisao-yoshida）で紹介しています。

■ レコーディングの方法は
抱える案件が多いので、先に録音日を決めて、ミュージシャンを集めます。その日までに譜面を用意し、複数の曲を一気にレコーディングすることが多いです。長く一緒に音を作ってきたメンバーだからできる方法です。

■ ラジオ高崎「&RADIO」はどんな番組?
基本的に、リスナーのおたよりとフリートークで展開しています。「大喜利」のコーナーは特に人気で、多くの投稿が集まります。ツイッターアカウント@wisaoでお題を投稿しているので、ぜひ参加してください。

「オトッペ」のウィンディ

【日時】10月4日15時、5日10時、15時の3公演
【問い合わせ】高崎音楽祭 http://www.takasakiongakusai.jp/

　「0歳から親子で楽しむ初めてのオーケストラ」と題し、特別編成の「ぴーかぶぅオーケストラ」が演奏。4日は吉田さんが制作に関わるEテレ「オトッペ」のキャラクター・ウィンディが、5日は「トイレの神様」などの曲で知られる植村花菜さんがゲストに登場する。吉田さん本人も演奏し、楽曲紹介などトークで盛り上げる。