群馬県で活躍するさまざまな“輝く人”を紹介するコーナー。今回はプロの落語家や講談師から技術を学び、県内外の高座で落語と講談を披露している中学生の高橋雄太君を紹介。落語と講談を始めたきっかけや、高座でのこだわり、今後の展望など落語と講談にまつわることから、休日の過ごし方といったプライベートなことまでを取材した。夢に向かって日々精進する、彼の素顔に迫る。

落語と講談の技術を磨く中学生　高橋 雄太君（14）

PROFILE

　2005年8月8日生。前橋市在住。小学生の時に参加した体験教室で落語の楽しさに目覚める。その後寄席で目にした人間国宝・神田松鯉さんの講談に感動し現在は同氏の教室で講談を学んでいる。学業に励む傍ら、東京の劇場やイベントで落語と講談を披露している。テレビ東京「こども経済TV」、GYAO!「木梨の貝。」、TBS「鶴瓶のスジナシ」、TBSラジオ「木梨の会。」といった多数のメディアでも紹介された。

　高橋君と落語の出会いは小学6年生の時。幼少期から水泳やそろばんといった習い事に通っていたが、どれも長続きしなかった。2016年と2017年の夏休み期間には東京で開かれた歌舞伎教室に参加。その時に目に入ったのが落語体験入門の募集で、歌舞伎の次を探していたこともあり参加したところ、講師を務めた落語家の巧みな話術に心を奪われ、「自分がやりたかったのはこれだ! 」と確信したという。

　教室で高橋君以外は全員大人だったが、全てが新鮮で高橋君は落語に夢中になった。そして「牛ほめ」「狸札（たぬきのさつ）」といった落語を覚え、「芸協らくごまつり」で高座デビュー。そんな中、とある寄席で、高橋君は講談師・神田松鯉さんによる「天保六花撰 玉子の強請」を目にした。その時のことを「松鯉先生の講談を見た時は、その迫力に衝撃を受けました」と振り返る。その後、松鯉さんの教室が開かれていることを知り、申し込んで講談を習い始めた。

　技術を着実に身に付けていった高橋君は、2018年の「芸協らくごまつり」でトリを務めるほどに成長。落語と講談、どちらも話術を基本とする日本独自の伝統芸能だが、両立している者はほとんどいない。中学生となればなおさらで、高橋君の存在は新聞やテレビ番組で紹介されるようになっていった。そんなある時、インターネット番組内で落語家になりたい人を募るコーナー「笑福亭になれる」に応募。見事採用され、番組MCの木梨憲武さんに連れられて笑福亭鶴瓶さんの前で落語と講談を披露すると絶賛された。その後もラジオ番組で落語家・林家正蔵さんとも共演し、アドバイスを受けた。

「第11回 芸協らくごまつり」で落語を披露する高橋君（2017年）

　高橋君のレパートリーは、8題の落語と講談5本。現在はそれらに加えて「ガマの油売り口上」と「相撲甚句」にも挑戦している。「芸の世界は厳しく、自分よりも実力のある人は星の数ほどいます。そんな中で生き残るためにさまざまなことに取り組みながら自分にとっての“三本の矢”を見つけ、強みにしたいと思って始めました」と語る。高橋君の夢は松鯉さんのような講談師になること。伝統芸能を受け継ぎ夢に向かって芸を磨き続ける、彼の挑戦は続く。

■落語と講談の魅力は
落語と講談のどちらにも言えますが、話術と仕草だけでお客さんを笑わせたり感動させたりできることです。また、同じ演目でも話し手によって異なる“色”を出せることにも魅力を感じました。

■ 高座でのこだわりは
自分の表情がよく見えるように頭を丸刈りにしていることです。あとは何より自分自身が高座を楽しむように心がけています。

■ 今までで印象に残っている高座は
職場体験の最終日に、体験先の老人ホームでやらせてもらった落語の一席です。皆さんすごく喜んで下さって、そんな笑顔を見ていたら改めて「落語をやっていて良かったな」って感じられてうれしかったです。

■ 宝物はありますか
松鯉先生から頂いた角帯です。先生にネタ見せした時に子供用の帯をしていたのですが、「ちゃんとした帯をした方がいい」とプレゼントして下さいました。

■ 落語と講談をやっていて良かったことは
学校の成績が良くなりました。主に古文や歴史に強くなりましたが、文章を読み解く力が付いたのか、テストで全体的に点数が上がりました。

■ 休日の過ごし方は
父のバイクの後ろに乗せてもらって、よくツーリングに出かけます。先日も長野県まで行って帰りに荒船風穴に立ち寄ってきました。自宅にいる時はYouTubeでゲーム実況をよく見ています。